フタバセイサクショ
お得意様のS社から、未だかつてない高難度・短納期の発注が舞い込んだ。それを受けた営業部長の平田と製造部長の神田が連携して生産計画を立て、若きエンジニア・久代と相澤に製作を一任する。その後、別部門だった丹後も加わり同世代の3人体制となって怒涛の日々へ。タフな状況をなんとか乗り切り、過去最大の難題をクリアするもまた新たな試練が訪れて……。
ほぼ失敗しない、ミスターパーフェクト。不言実行タイプで、現状に満足せず常に高みを目指すエンジニア。
自身のものづくりへの探求心が業務姿勢に表現されている。業務理解力は他の追随を許さない。
他部署の業務で得た経験を現在の金型製作に活かし、新時代のものづくりを予感させる若手のエース。
「大ピンチなんだ。用意した金型が顧客の都合で使えなくなった。つくり直すにも時間がなくてどこも対応してくれない」。愛知県にあるS社からの電話だった。それを受けた平田は早速S社へ。
S社の担当者はかれこれ10年、水素燃料電池自動車の部品製作において苦楽を共にしてきた仲である。「品質と希望納期への信頼度は唯一無二」との当社への評価にもきっちり応えたい。その一心で「1カ月以内に金型60面」という無理難題を引き受けた。
受注に際して平田は神田に相談し、課題を確認し合った。不可能を可能にするカギは、スムーズな材料の手配と社員のやる気である。打ち合わせたわけではないが、2人の考えは決まっていた。「これは成長のチャンスだ。若い世代に任せてみよう」と。
白羽の矢が立ったのは次代のエースと目されていた久代と相澤。「とんでもないムチャブリがきたな」と彼らは当時を振り返る。しかし、二の足を踏んでいる暇などない。自分たちより年齢もキャリアも上の先輩社員を取り仕切りながら、製作をスタートさせた。
他部門から丹後が加わり材料の荒取りを担当。「2人が苦心しているのは知っていた。仲間が困っているのだから助けられたら」と与えられた持ち場で力を尽くす。もはや若手主体のプロジェクトは全社をあげての大プロジェクトへと進化していた。
各部署の助けを借り、久代、相澤、丹後は周りをけん引しながら、ついにそれをやり切った。
「完遂したときの安堵感と達成感は格別でした」と3人。口を出さず見守るスタンスを貫いた神田は、彼らの姿を「若手エンジニアのお手本。実に頼もしかった」と称賛し、平田は「この世代は周りを巻き込む力と責任感で着実に物事を進めることができる」と認識を新たにした。
しかし、その直後に問題勃発。S社から製品の溝の一部にズレがあるとの指摘があったのだ。S社から支給された図面のデータ不備が原因だったが、こちらの確認不足が招いたミスでもある。モチベーションがどん底になりかねない状況だったが、一度困難を乗り越えたチームは強かった。速やかに再製作の準備を整え、タイムロスなく60面をつくり直したのだ。
「過酷な日々だったが、あの経験こそ成長のポイントだったと思う」「仲間がいたから頑張れたこと。決して一人にはしないという社風が、安心して全力投球できたポイント」と3人はプロジェクトを振り返る。
平田と神田も「たとえ失敗があっても責めることなく、反省から次への学びを得るよう促した。それが若手のチャレンジマインドを育むことだから」と温かなまなざしを注ぎ続けた。結果、S社からさらなる厚い信頼を獲得したことは言うまでもない。
これは、双葉製作所をより前進させたとあるプロジェクトストーリー。若手社員がエンジニアとして大きく羽ばたいた成長の物語でもある。
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